スクートラジオvol.35 経験者トークvol4

 

中山ファンの方には大変申し訳ありませんが、今回、中山さんはお休みです・・・。

 

ということで、今回は、経験者トークの第4弾。

 

スクートを始めるより前から個人的に勉強をみていて(いや、ゲームをしていた・・・)、ぜひともスクートラジオにゲストに出てもらいたかったHくんに話を聞きました。

 

Hくんは小学校高学年から学校に行きづらくなり、中学に入ってからも基本別室登校だったのですが、中学3年の途中から「学校が楽しい」と毎日学校に行けるようになったのです。

 

そうした変化の要因を尋ねたところ、本人曰く「先生方の支援や配慮のおかげ」とのこと。

 

一体、学校でどのような支援があったのか。

先生の関わり方。

友達の関わり方。

そのあたりを中心に本人の口から語ってもらっています。

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大まかなまとめと、そこから見えるクラス復帰への重要な条件

 

H君が学校に行きづらくなったきっかけは、小学5年生の時に体調を崩したこと。

 

中学1年:はじめは教室に入れず保健室登校をしていたが、すぐに別室を用意してもらった。基本的に別室登校。遅刻はあったが、休むことはあまりなかった。

 

中2:別室には時々先生が来てくれていたが、先生が常駐してくれているわけではないので、勉強はなかなか進まず。その点を保護者が相談したところ、中2にあがるタイミングで特別支援学級に入れてもらい、常に先生に勉強を見てもらえる体制をとってもらった。これは校長先生の配慮が大きかった。もともと校長先生が不登校にとても理解があった。

 

また自分のクラスで授業を受けることがあったが、クラスの仲の良い友達が給食を食べに来てくれたりして、クラスに入りやすい状況を少しずつ作ってくれていた。それほど仲が良かったわけではないクラスメイトもやってくれたりしていて、クラスに戻った時には、知らない誰かがいる、という状況はなかった。

 

中3:クラス分けで自分が苦手だった生徒が一人もいないクラスになったことがよかった。またクラスメイトも、自分が休んだりしても、何も変わらず普段通り接してくれていたのがありがたかった。中2の時の(担任の)先生は、とても登校刺激をしてくる先生だったが、3年時の先生はそうした感じはなく優しくて、遅刻してもそのまま受けれいてくれる。それが、とてもよかった。

 

以上が、H君が語ってくれたことをおおまかにまとめたものです。

 

それから、ラジオ内では出てきませんでしたが、収録後に「不登校の悩みを周りに言えたのがよかった」「小5・6、中1・2のスクールカウンセラーの先生がとてもよかった」とも話をしていました。

 

収録後に「不登校の悩みを周りに言えたのがよかった」「小5・6、中1・2のスクールカウンセラーの先生がとてもよかった」とも話をしていました。

 

クラス復帰の条件:考察

さて、こうして見ると、H君の事例から、学校に行きづらかったり別室登校をしている子が、再び登校したり、クラスへ戻れるようになる条件がいくつか見えてきます。

 

校長の役割:裁量権の使い方

Hくんは中2にあがる段階で、特別支援学級への所属を進められます。これは、別室登校をしている子の学習権を学校に今あるものを使ってどう保障してあげられるか。ここを、校長先生が形式や制度にとらわれずに考えて動いてくれたことを表しています。

 

その子に必要なものが何であり、それを提供するために利用できる校内資源にはどんなものがあるか。何よりもそこを第一に考え、見極め、柔軟に対応すること。こうした対応は裁量権のある校長先生にしかできません。そして、そもそも裁量権とはそういう風に使うためにあるのだと思います。なぜなら「形式や制度、規則があるからできない」という判断は「裁量」などなくても、誰にだってできるからです。形式や制度、規則があっても、十分に対応できないことがでてくるからこそ、わざわざ「裁量権」というものを与えているわけです。

 

こうした対応を校長先生がしてくれるかどうかは、単に子どもの学習権を実質的に保障する、ということだけに関わっているわけではありません。たとえその対応によって、子どもが直接回復に向かうことはなくても「寄り添って何とかしてくれようとしている」という信頼を子どもも保護者も学校に対して持つことができます。学校とのつながりをなくしてしまうと、途端に、家庭が利用できる社会資源がなくなってしまうのが現在の日本社会の脆弱なところです。それ自体を変えていかなくてはいけないことはもちろんですが、当面の間は、家庭と学校とのつながりが切断されることを防ぐことが家庭を孤立させないための最善の手段だと思います。

 

 

復帰環境としての「友達・クラスメイト」の役割

友達やクラスメイトの役割としては、「伴走者としての友達」と「安心できる生活環境としての友達」という二つの役割があると思いました。

 

「伴走者としての友達」:仲の良い友達

学校やクラスに同伴してくれる仲の良い友達がいてくれたことをHくんは話していましたね。大人でも初めての場所や不安な場所に一人で行くのに少々ビビることはあります。学校やクラスが不安を感じる場所となってしまっている子たちにとっては、そこに向かうこと自体がとても緊張を伴う作業です。その道程を一緒に歩いてくれる誰かが必要です。そしてここの役は「仲の良い友達」にしかできません。

 

「安心できる生活環境としての友達」:クラスメイトや同級生

しかし、そこまで仲が良いわけではない友達やクラスメイトができることもあります。それは、不登校や別室登校をしている子にとって自分たちが「安心できる生活環境」になってあげることです。不登校になっていたり別室登校している子たちは、他のクラスメイトから自分がどのように見られているかをものすごく気にしています。自分でも心のどこかで自分を責めている状態にありながら、まさにその部分を(思春期に)一番認めてもらいたいはずのクラスメイトや仲間、同級生から責められてしまう。これことほどつらいことはないでしょう。Hくんのクラスメイトが先生からそうした言動を抑えるように言われていたかどうかはわかりませんが、別室登校している子がクラスに復帰するには、自分が過ごす空間に今の自分を否定してくる誰かがいないことがとても重要です。クラスが安心して過ごせる場所と思えないなら、当然そんなところには戻れないですし、仮に勇気を出して一度は戻れたとしても、不安と緊張が高まり、すぐに入れなくなるに違いありません。そしてそうなった場合、うまくいかなかったという負の感情を伴った体験が上積みされている分、次の復帰はさらに難しくなります。

 

 

重要なのは「場所」ではなく「安心できる関係」

同時に、最後の方でHくん自身が「ゆっくり時間をかけて」と話していたように、クラスへ戻っていくにも段取りがあります。

 

最初はその子が過ごしている場所(別室・保健室など)へ、クラスメイトの方から、それこそアウトリーチのように出かけていき(Hくんの場合は特別支援学級)、そこでまず安心な関係を作り上げて、徐々に、クラスへと、その関係まるごと持っていくような形で移動していく。そんな段取りが必要なのだと思いました。(ここの段取りを無視して、そもそも環境として入りたくない要素満載のクラスに「ちょっと行ってみようか」と誘う先生が多いんですが、それがその子に結果的にどんな影響を与えるのか、ちと考えなおす必要があるんじゃないかな。)

 

 

*もちろんこれはHくんの事例であり、すべての子が同じように復帰できるとは限りませんし、復帰が必ずしも、その子にとってよいものであるとは限らないことは付け加えておきます。

 

 

来週は、中山さんも、小話ネタをたくさん抱えてもどってくると思います!

 

 

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コメント: 4
  • #1

    キョンキョン (火曜日, 15 3月 2022 21:31)

    やっぱせんせーよね。
    私ん時は転校した校長がめっちゃ見下しているのが14の私にわかったもんね。
    それで、嫌になった。
    学校休んで、プリント持って来るんだけど、仮病使ってたから、お母さんのシャドーで病的メイクしてた。
    バレバレなのに(笑)
    でも、自転車乗るの教えに来てくれたロックの友だちのおかけで、乗れるようになって、どこでも行ける自由さをしって、突然吹っ切れたかな~
    数学のせんせーあきらめなかったな私に対して。
    まっちゃん、やってみーと一緒にXをエッキスっていってたけど、解いてくれて、まっちゃんはここでつまづいてるんやって、誰か助けてやってって言ってくれた。
    で、なんか行けるようになった。人生いろいろ、きっかけもいろいろってとこかな~

  • #2

    古豊慶彦 (水曜日, 16 3月 2022 14:19)

    先生の存在って本当に大きいのだとあらためて感じました。私は先生ではないですが、おとなとして自分もちゃんと頑張ろうと思いました。
    学校復帰が誰にとっても良いことではないと思いますが、Hさんがこんなにもたくさんこれまでのことを話してくれるのを聞いて、本当にいろいろあったのだろうけど、良かったなぁと思いました。
    貴重なお話本当にありがとうございました。

  • #3

    世界の中山 (水曜日, 16 3月 2022 20:11)

    先生の登校刺激でさえも今は感謝している!と言い切れるとこがすごいね。中学時代を振り返り、まだ近い過去の不登校の経験をここまで話せたら、何も心配いらんね!
    これからの彼の未来にエールを送ります!!!

    とても素敵な回でした。

    中山さんのファンって何人いるんですかねー?私も大ファンです❤️

  • #4

    内海 (金曜日, 18 3月 2022 19:48)

    >キョンキョンさん
    そんな風に生徒と向き合ってくれる先生が今はなかなかいないですね。そういう資質を持っていても、仕事の忙しさや、「不公平」とか「ひいき」と保護者から批判されると困るというところからの無意味な平等主義とかで、発揮できなかったりします。

    >古豊慶彦さん
    先生ではない大人だからこそできる関わりもたくさんありますしね。しかも、その子によって、どんなキャラクターの大人と合うかも違います。そこは偶然の部分も大きいからこそ、子どもたちの普段の生活の中にいろんな大人と関わる環境があって、自分と合う誰かにまぁまぁ出会える社会がいいなと個人的には思っています。

    >世界の中山さん
    中山さんのこと、とってもお好きなようですね。ファンの数は「そろそろファンクラブが立ち上がるんじゃないか」という噂を耳にするくらいは、いらっしゃるかと。(夢だったかもしれませんが。)